この夏、落雷の被害が頻発している。8月21日には埼玉県で女性が重傷を負ったり、火事が起きるなどした。7月の雷観測日は7日、8月は11日と平年の3、4倍多い。太平洋高気圧の勢力が例年より弱く、大気の状態が不安定になることが多かったためだが、どう対処すればいいのか。(安岡一成)
■50年で最多
8月21日午後、埼玉県杉戸町で雷に打たれた女性(48)が一時意識不明の重体に。同県秩父市の男性方は全焼した。都内では、小田急線が一時運転を見合わせた。
関西では24日、京都市伏見区の醍醐寺に落ち、観音堂などが全焼した。
26~31日にかけて東海や関東などを襲った「平成20年8月末豪雨」では、29日、落雷の影響で横浜市港北区で約100世帯が停電。東京都世田谷区や埼玉県熊谷市、川崎市中原区などでも計約2500世帯が停電した。
気象庁によると、東京都の7月の雷観測日は4、7、12、14、18、27、29の7日あり、平年(2.3日)の約3倍でここ50年で最多だった。8月は4、5、6、15、16、20、21、28、29、30、31の11日で平年(2.5日)の4倍以上となった。
気象庁天気相談所は落雷多発の原因について「例年、夏に日本全体を覆う太平洋高気圧が今夏は小さく、西日本しか覆わなかった。そこに寒気が流れ込み、大気の状態が不安定になったからでは。こうした気圧配置は夏の終わりに生じやすい」と分析する。同相談所によると、数年に1度の割合で発生しており、気象状況は東海地方で10人が死亡した平成12年9月の東海豪雨の際と似ているという。
■電圧1億ボルト
そもそも雷の正体とは。財団法人「電力中央研究所」に聞いた。
雲の中で氷の粒がぶつかり合うとプラスとマイナスの電気を帯び、蓄積される。これが地上に放電されることで起きる。電圧は約1億ボルト。家庭で使う電圧の約100万倍にもなる。稲妻の長さは200~1万メートルに及び、直撃されると約8割が即死するという。19年の警察白書によると、14~18年の5年間で雷被害による死者は15人、負傷者は64人にのぼった。
雷は高い所に落ちる。グラウンドやゴルフ場などのオープンスペースは特に危険だ。かといって、樹木のそばでは放電を受けることもある。雷にあった時は、すぐに車や建物に避難するのが一番だ。
高層ビルが立ち並ぶ街中ではどうするか。同研究所は「ビルには避雷針があるので、地上に落ちることはまずないが、ビルの中に入るのが一番いい」と話す。
■家電も被害
雷が家屋に直撃しなくても、電線やインターネットの通信線を伝わって異常に大きな電流が屋内に流れるケースもあるという。これは「雷(らい)サージ」と呼ばれる。
最近はパソコンだけではなく、冷蔵庫や電子レンジといった家電にも高電圧に弱い半導体が組み込まれていることが多く、雷サージで壊れることがあるという。
あるメーカーは「被害は防ぎようがないので、どんな製品でも通電しているものはコンセントからプラグを抜くしかない。取扱説明書でも必ず触れている」と説明する。
落雷による家電の被害は火災保険に入っていれば補償される。ただし、「建物だけ」の契約では補償されない。ほかの対策として、同研究所は「市販されている避雷器を取り付けるのも多少は効果がある」と話している。「備えあれば憂いなし」のようだ。
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