「安全性に懐疑的な立場から積極的に原発に関わり続けていくのが望ましい。県は原発と共存する道を選択すべきではないか」。7日の県議会での泉田知事の説明は、30分間にも及ぶ「大演説」だった。中越沖地震による施設の被害状況から始まり、国や県技術委員会の見解、自身が取り組んできた対策などを一つずつ語った。
◇
同原発の安全性について国は2月、「安全性は確保されている」との見解をまとめ、地元の首長も再開容認を明らかにしていた。それでもなお、知事が重視したのは「地域社会の合意」だった。東電の安全対策の改善を求め、県として安全性を独自に判断するために技術委員会のメンバーに、再開慎重派を加えた。
「柏崎、刈羽の地元では説明会が何度もあったが、全県での理解の状況と差がある。情報提供を進めたい」として、3月上旬、新潟市や上越市で県民説明会を開催。自民県連側に運転再開を求める決議を県議会に提出するよう、打診もしていた。
先月11日には、同地震後9回目となる火災が発生。予定されていた全員協議会の日程も延期された。7日にも東電に対して「お粗末であり、誠に遺憾」と批判した。その後同30日には、地震直後の07年7月以来初めて、自身が原発を視察。「7号機は被災前と全く同じ。納得度は高まった」と評価した。
運転再開の表明は県議会への説明という形をとった。県民一人ひとりに説明するのは無理だとして、県民を代表する県議会を表明の場とした。泉田知事の姿勢に「責任逃れ」との声もある。しかし、県民の合意形成を求めたのは、評価すべきではないか。
今後、東電が試運転に踏み切れば、トラブルや火災が発生しないとは言い切れない。知事は「前提条件が崩れれば、再開の了承は撤回されることもあり得る」と述べ、県技術委の議論は継続することを求めている。
試運転から営業運転に移る前に、県技術委で確認するとの条件もつけた。停止中の残る6基については、7号機と同様の手続きをとるかは「決めていない」という。知事が述べたように「原発に関わり続けていく」ためには、安全性を高めていく不断の努力が不可欠といえる。
◇
●「早く元の姿に」地元首長歓迎
泉田知事が原発の運転再開に同意した7日。地元首長は4月10日の三者会談以来、約1カ月待ちわびた知らせにほっとした表情を見せた。
会田洋・柏崎市長は「三者の考えが一応そろい、次のステップに移れる」と、安心した様子。その上で、最新の学術成果を原発の耐震安全性に反映させることや、原発安全性の研究拠点の地元整備などを国に求めると強調した。
品田宏夫・刈羽村長は「至極真っ当な結論。でも時間がかかりましたね」と皮肉交じりに歓迎。「原発や原発関連で職を得ている村民は安心したと思う。早く元の姿に戻ってもらいたい」と話した。
経済・観光業界も再開を歓迎。柏崎商工会議所の松村保雄会頭は「本格的な復興のスタートだ」。柏崎地域観光復興推進協議会の内藤信寛会長は「柏崎の海は地震前と同じく安全になったとPRできる」と喜び、「以前のように海水浴客100万人を目指したい」と鼻息を荒くした。
一方、原発の安全性を不安視する声も根強い。柏崎刈羽原発1号機の設置許可取り消し訴訟(4月23日に最高裁が上告棄却、住民側敗訴)の原告の一人、武本和幸・元刈羽村議は「中越沖地震で、柏崎刈羽が原発立地に不適な土地だと立証されたはず」。
原発付近の震源活断層が想定(36キロ)より長く、より大きな地震が起きる可能性を指摘する専門家もいるとして、「問題は解決していない。7号機を無理に動かすのは許されない」と語気を強めた。
◇◇◇
【知事演説骨子】
・エネルギー資源が乏しい我が国に当面、原発は必要
・運転再開に向けての安全性はおおむね確保された
・原発事故の影響は大きく、高度な安全性が求められるが、人が造るものに100%安全なものは存在しない
・地域住民の暮らしが柏崎刈羽原発に直接・間接に依存して成り立っている
・国内に原発がある限り、仮に柏崎・刈羽に原発が無くても事故リスクは消えない
・今回、県の技術委員会で議論された結果、全国の原発の安全基準が引き上げられたことは積極的に評価すべき
・原発の安全性を高めるためには、安全性について懐疑的な立場から、積極的に原発にかかわり続けるのが良い
・当面、新潟県は原発と共存する道を選択すべきではないか。人の知恵には限りがあるが進歩も続けている
http://mytown.asahi.com/niigata/news.php?k_id=16000000905080005-asahi.com

