子供の防犯力を高めようと、教育現場で盛んに作られている「地域安全マップ」。全国的に普及が進んでいるが、児童が全く参加せずに大人の手だけで作られていたり、一度作ったきりになっているなど、効果的に運用されていない事例も目立ち始めている。本来の防犯効果を損ないかねない状況となっていることから、国は正しい作成方法の啓発に乗り出している。(中村真由子)
≪2割が関与せず≫
地域安全マップは「入りやすい」「見えにくい」という犯罪の起きやすい2つの判断基準をもとに、自らが街を歩いて判断し、危険な場所を地図に書き込んで作られる。防犯対策の手法として、立正大学の小宮信夫教授が平成14年に考案した。
東京都が20年度初めに実施した調査によると、公立小学校1316校のうち、通学路の安全マップを作ったことがある学校は1248校だった。しかし、作成するすべての過程に、児童が参加したと回答したのは584校にすぎず、全体の約2割にあたる279校では子供が全く関与していなかった。
安全マップは「木々で囲まれた駐車場」「出入りが自由な空き家」などを自分で見つけることで、犯罪に巻き込まれない力を身につける作成過程に重点を置いている。にもかかわらず、大人が作って配布すれば、子供の危険予測能力は育たず、本来の防犯効果は期待できない。
東京都では今年度、安全マップ作りの研修会や公開モデル事業などのため、計約1760万円の予算を計上。小宮教授は「全国的に見れば、東京都の取り組みは非常にすばらしい。他府県ではもっと多くの学校で間違った安全マップ作りが行われている」と指摘する。
≪一度作ったきり≫
犯罪の起きやすい場所ではなく「不審者情報」を書き込んで「安全マップ」としている学校もある。定期的に活動を行わず、一度作った安全マップを校内に掲示し続けている例も少なくないという。
小宮教授は「子供がその場所に潜む危険性に気づく能力を育てることが目的。極端に言えば、できた安全マップは破ってしまってもいいんです」と話す。
文部科学省が全都道府県の公立小学校に向け、通学路の安全マップ作成を促す通知を出したのは17年。その後、導入が進み、すでに全体の9割が安全マップを作っている。
確かな防犯効果を得るため、国も対策を検討中だ。政府の犯罪対策閣僚会議は昨年12月、「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」を策定。地域安全マップを取り上げ、「適切な作成方法の啓発を推進する」とした。
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