中国製冷凍ギョーザ中毒事件の発覚から30日で2年となる。国民感情の対立を招いた事件の捜査は進展しておらず、その教訓をどう生かすかは日中関係の今後にもかかわる。日中両政府は事件とは切り離して「食の安全」に関する覚書を交わし、閣僚級定期協議などを通じて再発防止策を進めていく方針だ。
覚書については、09年10月に訪中した鳩山由紀夫首相が温家宝首相との会談で、協力の枠組みとして「日中食品安全推進イニシアチブ」の創設を提案したことを契機に、事務レベルで内容を協議してきた。事件直後に両政府の意思疎通が不足した結果、「双方の不信感を招き、国民感情の問題になった」(日本政府関係者)との反省から、覚書は両政府が緊密な連携を取ることを柱にする見通しだ。
具体的には、厚生労働省と中国の国家品質監督検査検疫総局に担当官を置き、閣僚級定期協議を開くほか、重大な食品事故が起きた場合の製造現場への立ち入り調査受け入れを明記する方向で最終調整が進められている。
一方、ギョーザの製造元「天洋食品」(河北省石家荘市)は現在も操業を停止中。同社関係者によると、製品を保管する工場冷凍庫で、何者かが注射器を使って段ボールの外側から殺虫剤を混入させたとみられ、冷凍庫を管理する社員数人が断続的に拘束された。
しかし、中国の捜査当局は、決め手となる注射器などの物証、目撃者の証言を得ていない模様だ。昨年秋には捜査の指揮を執ってきた余新民・公安省刑事偵査局副局長を上海の同省研究所トップ(局長級)に昇格させるなど「段階的な捜査の幕引き」(外交関係者)を進めている。
中国指導部は09年1月、日本人の対中感情を好転させるため、殺虫剤が中国国内で混入したことを認める「中間報告」の公表を検討した。だが、河北省当局は事件の全容解明前に責任を認めることに抵抗し、報告が先送りされた経緯がある。
両政府は、温首相訪日や鳩山首相訪中のタイミングに合わせて担当閣僚が覚書を交わすことで、国民感情の対立に終止符を打とうとしている。だが、全容解明を棚上げして安全対策を強化しても、国民感情の改善につながるかは不透明なままだ。
◇「中国製品」消費者なお警戒感 スーパー「事件前の水準」
事件直後には中国産食品に対する消費者の拒絶反応から、一部商品の撤去を迫られた流通業界だが、大手スーパーでは「冷凍などの加工食品を含め、中国産の取扱量は事件前の水準に戻った」(イトーヨーカ堂、イオン)という。小売業界が事件を機に食の安全管理体制を強化したこともあり、「中国製」に対する拒否感も徐々に薄れているようだ。
中国製加工食品などの輸入を手掛ける大手商社によると、中国からの輸入量は、中国税関当局が対日輸出規制を緩和した08年秋ごろから急増し、「現在では事件前の水準以上に増えている」と話す。特にこの1年、節約志向に対応して冷凍食品が特売の対象になることが多く、「国産品より価格の安い中国製は欠かせない」(大手スーパー)事情もある。
中国で一部冷凍食品を生産し国内に輸入している味の素は、事件後の08年2月の冷凍食品販売額が前年比2割減となったが、09年2月は同2割増に回復。「事件の影響はなくなった」と話す。
一方、日本冷凍食品協会が09年8月に主婦を対象に実施したアンケートによると、冷凍食品を購入する際に重視する項目として「原料が中国産以外であること」と回答した人は74・8%に上った。08年7月に比べ5・6ポイント低下したが、「中国製品」への警戒感はなお高水準といえる。
■ことば
◇中国製冷凍ギョーザ中毒事件
07年12月~08年1月、冷凍ギョーザを食べた千葉県と兵庫県の3家族計10人が嘔吐(おうと)や下痢の症状を訴えて9人が入院、千葉県の5歳の女児が一時重体となった。ギョーザは中国河北省石家荘市の「天洋食品」製で、有機リン系殺虫剤メタミドホスが検出された。その後も回収分のギョーザを購入した河北省の企業で健康被害が発覚した。
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20100130ddm002040054000c.html -gooニュース

