ネットいじめや携帯依存など中高生をめぐる携帯電話のトラブルを防ごうと、利用制限のある学校指定の携帯、名づけて「制携帯」を持つことをルールとした中学・高校がある。 文部科学省は学校への携帯の持ち込みや使用を原則禁止とするよう通知しているが、「禁止するより教えて防ごう」との取り組みに、全国から注目が集まっている。
この学校は神戸市須磨区の私立中高一貫校、須磨学園。 今年度から中学・高校の新入生と教職員全員に制携帯の所持を義務づけた。 他の学年の希望者を含め、約530人が利用している。
昼休み。 高校1年の女子生徒が教室で、携帯を手に「メール来てないわ」と確認すると、電源を切った。 昼休みなどの決められた時間帯であれば、校内でも教室に限って使用していいのだという。
学校が、保護者全員の同意を入学時に取り付けた上で携帯電話会社と契約。 料金は原則として授業料とともに口座引き落としで学校に納める。
中1は黒、高1は白。 色を統一したほかは普通の携帯と外見は変わらないが、生徒の利用には細かい制約がある。 有害・有料サイトに接続できないフィルタリングがかかり、深夜から早朝はウェブサイトへの接続自体ができない。 掲示板やブログの開設、書き込みは禁止している。
制携帯以外の個人加入の携帯は、学校に持ち込んではいけないことになった。 当初は制携帯と私有携帯の2台を所有する生徒も3~4割程度いたが、多くが「中途解約料がかかるので仕方なく」という理由だったといい、徐々に解約が進むとみている。
同学園ではこれまで「携帯を学校に持ち込む場合は校門で電源を切る」という校則を設けていた。 制携帯導入に踏み切ったきっかけは3年前に近隣の私立高校で起きたネットいじめ事件だった。 この学校は男子生徒が自殺するまでいじめを把握できなかった。
西泰子理事長は「学校が使用を禁じるだけではネットいじめは防げない。 携帯の危険性を教え、正しい使い方を実践させるのが学校の役割ではないかと考えた」という。
メールやネットの使用履歴は学校が把握し、保護者の要請に応じて開示できるようになっている。 同学園の生徒が家出した際、保護者が行方を捜そうと携帯会社に履歴開示を願い出たが、「警察の要請でないと出せない決まりだ」と拒まれたことがあり、生徒を守る上で危機感を覚えたことがきっかけだという。
導入して半年で、実際に履歴の開示請求を受けたのは月1件程度というが、狙いは「大人が見るかも」と意識することによる抑止力という。 西理事長は「携帯を好き勝手に使える状態は、子どもにとって無免許運転のような危険をはらむ。 制携帯は仮免許のようなもので、社会に出る前にルールを覚える実地訓練としたい」と話す。
制携帯のサービスを提供している携帯会社のKDDIには「制携帯のような取り組みは、他社を含めて聞いたことがない」と話す。 同学園には4月以降、大阪市の私立学校が視察に訪れたほか、関東の学校などから数件の問い合わせがあったという。
■生徒「ルールは適度」
同学園の中学生徒会は制携帯について生徒にアンケートを取った。 中1で71%、高1で62%が、制携帯のルールを「適度」と答えた。
ただ、導入を「良かったと思わない」とする割合は、中1で10%にとどまる一方、高1では40%に。 不満は厳しいフィルタリングとインターネット接続の時間制限に集中していた。 同校では午後9時まで自習室を開放しており、生徒の「帰宅する頃に携帯でネットが見られないのは不便」という声があったという。
また、教育向けコンテンツもフィルタリングでブロックされることが判明。 そこで学校側は、当初はウェブに接続できない時間を中高とも午後10時~午前6時としていたところ、8月から高校のみ午前0~5時に短縮し、フィルタリングも緩めたという。(秋山千佳)
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